2017.5.26 文化庁に要請
- 下鴨神社と糺の森問題を考える会
- 2017年8月5日
- 読了時間: 5分
去る5月26日、文化庁の世界文化遺産室へ伺い有意義な情報交換ができました。文化庁からは世界遺産センターへ送付した報告書の概要について説明をしていただきました。私達からはユネスコに提供した情報と共に、京都市が文化庁に提出した報告書が隠している情報をお伝えしました。
(((((( 以下、要請書 ))))))
文化庁長官 宮田亮平 様
(文化庁文化財記念物課御中)
世界遺産の二条城・下鴨神社についてのユネスコ世界遺産センターあて政府報告書の「概要」に関する面談にあたっての要請書
元離宮二条城東側空間再整備を考える会
糺の森未来の会
世界遺産下鴨神社・糺の森問題を考える会
連絡先 市民共同法律事務所(弁護士・中島晃)
FAX 075-256-2198
文化庁の皆様におかれましては、日頃から文化振興のためにご活躍をいただいていることに心から敬意を表します。ユネスコへ提出された「世界遺産の下鴨神社と二条城における事業報告書」の本文を不開示にされたことは大変遺憾ですが、本日、ご多忙な中、面談に応じていただいたことには大変感謝しております。その上で、世界遺産条約履行のための戦略的目標「5つのc」で位置づけられている「地域コミュニティ」の一員として、私たちのもつ情報および意見をお伝えいたします。
1、文化庁が京都市から入手された情報は、以下に示す通り限定的・不正確であり、世界遺産を保護する観点から、新たに追加的な情報収集を行っていただき、ユネスコへ追加報告(補強)を要請します。
私たちは、文化庁が当該報告書を作成されるにあたり京都市より取り寄せられた資料をすでに入手しましたが、その資料には以下の問題点がありました。
①二条城に関しては地域コミュニティ側の「意見」が一応は記載されているにもかわらず、下鴨神社に関してはそれらの情報が一切示されていません。
②二条城に関して記載されている地域コミュニティ側の意見や事実経過については、開発事業の当事者である京都市側が一方的に主張しているものであり、公平性の観点から問題です。正確に事態を判断するためには、住民側が実際にどのような主張をもって京都市側に異議を申し立ててきたか正確に把握されるべきです。
③下鴨神社に関しては、美観風致審議会の資料のみの情報提供であり、その中で出された懸念についての世界遺産保護の観点からの報告はなされておらず、イコモスの「理解」が捏造(一般的にすでに報道されている)されて議論がすすめられたプロセスの異常さについても報告されていません。しかも、審議会は市長の諮問機関(内部的手続き)にすぎず「地域コミュニティ」の意見については一切反映されていません。私たち地元住民団体や町内会・氏子と下鴨神社・京都市・開発業者との交渉の経過にいても一切触れられていません。例えば、わずか数十軒を対象にした説明会が一度あったきりで、「地域コミュニティ」は今回の決定に関する情報提供からさえも排除されています。開発により世界遺産下鴨神社の普遍的価値は著しく損なわれつつありますが、その実態が文化庁に伝わっていません。
④下鴨神社コアゾーンへの倉庫建設をめぐっても、神社側の主張の真偽が本当に検証されているのか、氏子として長年貢献してきた周辺住民と神社の話し合いの状況などについても一切記載がありません。
⑤ ①②③④に示された通り、「地域コミュニティ」側の主張について文化庁自身が調査していただかなければ不十分な報告書にならざるを得ません。地域住民に対して聞き取り調査ないし正式な情報提供の要請をなされ、ユネスコへの報告書を補強されるべきです。
2、当該報告書作成にあたり京都市等に照会された際に、文化庁より京都市に発出された文書などがあればご提供願えればありがたいです。
ユネスコ側は,インパクト評価についての情報が重要であり,これを文化庁宛に求めている旨の説明をしておりましたが,この点での情報収集の方途とその内容についてもご教示されるべきと考えます.なぜなら,住民にとってこの情報共有は極めて重要だからです.
3、ユネスコ側と調整し、世界遺産の真正性と普遍的価値を守る観点からユネスコの照会事項やそれへの文化庁の回答(報告書の本体)を公表されることを要請します。
今回の情報不開示については、私達は極めて遺憾であることは冒頭に述べました。法に基づき不服申し立ての手続きをとるとしても、それらの手続き待たずに、文化庁として積極的に情報開示の措置を取られてはどうでしょうか。今後の世界遺産保護活動行政を進める上でも文化庁の力になるものと確信しております。
4、世界遺産センターに情報提供した資料のうち、さしあたって見ていただきたい資料に関し、別途お渡しします。私たちは世界遺産の普遍的価値を守りたい一心で検討を加えていきました。ぜひとも、ご参考いただきたいと考えております。
5、最後に、ユネスコ世界遺産センターへの対応いかんにかかわりなく、現時点においても文化庁としてなしうる世界遺産保護のための措置を講じていただきますように要請します。今回の開発をかわきりに下鴨神社を含むいっそう多くの遺産群において開発が進むおそれがあるからです。「現行国内法」の限界により守れないのであれば、昨今の世界遺産委員会の考え方の発展を踏まえた新法による措置を検討されるべきと考えます。これ以上、私たちの大切な「古都京都の文化財」が傷つくことがないように、文化庁の皆様のお力添えをお願いします。
以上
Comentarios